「マーケティング」アメリカと日本での始まり
前回のコラムでは"マーケティング"という用語の定義が分かりにくいというお話を書きました。
さて、この"マーケティング"という言葉はいつ頃から使われているのでしょう?
マーケティングの思想に相当するものは、それこそ商売が成立した昔からあった訳ですが、アメリカでも"マーケティング"という用語は20世紀初頭までは用いられておらず、しかも現在でさえも、他の言語には"マーケティング"という言葉に相当するものがないということが、やはりわかりにくさの一因ではないでしょうか。
そんな"マーケティング"が大学の講義として登場したのは1902年ミシガン大学、カリフォルニア大学、イリノイ大学で開設された記録があるようです。
この段階では"流通産業"として知られたものを取り扱う講座として用意されたようで、その背景には普及しつつあった鉄道網を使って、商品(特に穀物)をいかに効率よく北米市場に配給するかという「配給論」としてスタートしたとのこと。
そして、1905年ペンシルベニア大学で"Marketing of Products"という講義が、1910年にはウィスコンシン大学で"Marketing Methods"という講座が開講され、この講義を担当していたバトラーは同じ名称を持つ小冊子6冊を出版したとされています。
そして遅れること50年、日本にマーケティングが持ち込まれるきっかけとなったのは、1955年日本生産性本部のアメリカ視察以降となります。
この視察団の団長であった、当時の経団連会長、石坂泰三が「アメリカにはマーケティングというものがある。我が国もこれからはマーケティングを重視すべき」と発言したのは有名なエピソードとしてご存じの方も多いかと思います。
この出来事から、日本の産業界での「マーケティング」への注目度は高まります。商業貨物の輸送事情の停滞から脱出するために宅急便ビジネスを興した、ヤマト運輸の小倉昌夫がマーケティングを勉強して取り入れたエピソードは小倉昌夫の著書「経営学」を読んだ方ならご存知のはず。
ただ、残念ながら、その当時それなりにマーケティングはブームになったようなのですが、平成26年の商務情報政策局の「ビジネスモデル革新について」という資料にはこんな記載があります。
- 日本のサービス業は、米英と比べ、マーケティング投資を含む経済的競争力(人材投資、
ブランディング投資、マーケティング投資など)への投資が少ない。 - また、日本はCMO(最高マーケティング責任者)を任命している企業が少ない
ただし、新たなビジネスモデルの可能性として、
- ITの発展によりマーケティングの高度化、新サービス創出への期待が高まっている。
- 先進的な企業において、実際にデータを活用したマーケティングが始められている。
このような点を取り上げています。
日本にマーケティングが上陸してから60年、ITの発展によってマーケティングに新たな期待が高まっているこのタイミングで、是非デジタルマーケティングにトライしてみるのはいかがでしょう?
参考文献
- ロバート バーテルズ:マーケティング学説の発展(1993/9)
- 商務情報政策局:ビジネスモデル革新について(平成26年3月)
- 小倉昌男:経営学(1999/10)