コラム:スマホは最強のマーケティングツール?(1)

いまやスマートフォンがネットへの入り口に

 10年くらい前は、電車の中での必携アイテムといえば、「本・雑誌」「新聞」「音楽プレイヤー」だったと思います(個人的には)。ところがいまや、電車の中で本や新聞を読んでいる人はごく少数派。これも主観ではありますが、山手線など首都圏の鉄道では、乗客の6割以上はスマートフォン(スマホ)をいじっているのではないでしょうか。

 そんなスマホを、「顧客チャネルとして有効活用したい」という企業が増えています。なぜなら、スマホは常に携帯しているので、ユーザーの接触時間も意外と長いからです。ニールセンが先月26日に発表したニュースリリース「スマートフォンからのインターネット利用者、2015年冬にはPCを超える可能性 ~ ニールセン、最新のインターネット利用状況を発表 ~」によると、「1日あたりのインターネット利用時間はスマートフォンの1時間48分に対し、PCは54分」ということで、倍近くの開きがあります。特徴は、年齢層が若いほど、スマホ経由でのインターネット利用時間が長いということ。実際、このリリースにある図表3「性年代別 スマートフォンからの1日あたりのインターネット利用時間 2015年4月」を見ると、男女共に「29歳以下」の方が、スマホでのネット利用時間が長いです。「29歳以下の女性」の場合、なんと2時間24分もスマホでネットを利用しています。全体的に、女性の方がスマホの利用時間が長いようですね。

 では、スマホでどのようなネット利用がされているのでしょうか。このリリースによると、動画や音楽、ゲームなどが含まれる「エンターテイメント」カテゴリが月間3時間13分、またEmailやLINEなどが含まれる「コミュニケーション」カテゴリが月間1時間16分で、この2分野がけん引しているようです。

企業はなぜスマホに期待するのか

 ここで、「顧客チャネル」としてのスマホの可能性について考えてみましょう。

 スマホとPCの決定的な違いは、「時間や場所を選ばず、どこでも好きな時にネットを利用できること」にあります。たとえば私自身、買い物の最中、「商品名は何だっけ」「ここで買うより、B量販店に行った方が安いかも」など、スマホを使って商品名を検索したり、価格を比較したりしたことがあります。おいしいものや珍しいものがあれば、その場で写真を撮ってSNSにアップしたくなりますし、ひまつぶしに読んでいたSNSの投稿が面白く、共有することもたびたびです。

 もしスマホがない時代なら、商品名を思い出せなければ、購入することはなかったかもしれません。おいしいものや珍しいものがあっても、記録しなければそのまま忘れてしまうでしょう。その点スマホなら、単に記録するだけでなく、それを拡散することができます。

 消費者が「これが欲しい」と思う時に、情報を届けられる。商品やサービスに「おっ」と思ったら、その場で情報を拡散してくれる。「時」と「場所」を選ばず、消費者の心が動いた瞬間に、情報を配信・拡散できる点が、顧客チャネルとしてのスマホの最大の魅力でしょう。

スマホで顧客とつながる3つの施策

 では、スマホを通じて消費者とつながるにはどうすれば良いか。大きくは3つの施策があります。

  1. Facebookやツイッターの公式アカウントを開設し、商品情報やクーポンの提供、コミュニケーションを取る「SNS型」:東急ハンズや飲食店など
  2. 専用のアプリを提供し、商品のレコメンデーションやお得情報を提供する「アプリ型」:ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」のコーディネートアプリ「WEAR」など
  3. 特定の地域や場所を訪問した顧客に対し、クーポンなどを配信する「O2O」型:NEXCO西日本や、イベント会場など

 細かく見ていくと、各施策でさまざまな目的があるのですが、ここではひとまず上記3つに大別しておきます。この中で、比較的手軽に始められる施策が、SNS型でしょう。配信する内容や頻度などでルール作りが必要で、きめ細かく運用するには工数もかかりますが、ほぼコストゼロからスタートできるという利点があります。

企業の公式アカウントはどこまで効果があるか?

 そんなSNSの企業公式アカウントについて、実際に効果はどれくらいあるかを調査した結果が、アライドアーキテクツ社よりプレスリリースで発表されました。今年6月1日に出た「『企業/ブランドのSNS公式アカウントからの情報取得に関する意識調査』を実施」です。

 これはインターネットユーザー3500名を対象に実施した調査で、この結果によると、SNS公式アカウントから商品やサービスの情報を取得した後、「実際に購入した」という人は43%に上っています。また33%が「機会があれば購入したい」と回答しており、SNS公式アカウントが消費者の購買行動に影響を与えていることは確かといえます。

 なお、SNS公式アカウントで情報を取得しているジャンルとしては、男性は「家電メーカー」(63%)、「食品メーカー」(58%)、「酒造メーカー」(47%)、女性は「化粧品」(66%)、「食品メーカー」(62%)、「生活雑貨」(49%)だとのこと。男女を合わせて見ると、「食品メーカー」(58%)がトップでした。

 もちろん、ただSNSでつぶやきを投稿すればいいだけではありません。消費者が求めている情報は、「割引やキャンペーンなどのお得な情報」(84%)がトップ。次点は「新商品や新サービスに関する情報」(66%)でした。消費者は、「新商品やサービスの情報をいち早く、そしてお得に入手できる」ということをSNS公式アカウントに期待しています。

 ただしSNS公式アカウントは、あくまでスマホという顧客チャネルの中の一部。次回のコラムでは、顧客にリーチするためスマホをどう活用していくかについて、最近のニュースリリースを基にお伝えします。